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プロが指南する これからの不動産投資

黒田 伸文(税理士)

エスペランサ税理士法人

代表社員・税理士 黒田 伸文(くろだ のぶあき)
2006年(平成18年)1月 藤本公認会計士事務所に入所
2009年(平成21年)8月 藤本公認会計士事務所をエスペランサ税理士法人に改組し、同時に、代表社員に就任。
税務及び会計の面から多くの企業経営者や個人の方からの相談を受け、最近では特に資産税や相続・事業承継対策を中心としたコンサルティング業務に多数従事している。

西野裕昭(ファイナンシャルプランナー)

エスペランサ税理士法人

ファイナンシャル・プランナー 西野 裕昭(にしの ひろあき)
2011年(平成23年)4月 エスペランサ税理士法人に入所
個人の資産形成や法人の経営に関してお客様の目線でのニーズに応え、幅広い業務に従事している。

終身雇用の崩壊、公的年金制度の見直し、少子高齢化など、大きな社会構造の変化が起こっているさなか、不動産投資をとりまく環境にも変化が現れはじめています。ここでは、「税理士」と「ファイナンシャルプランナー」、それぞれ不動産投資に関わるふたりのプロフェッショナルに、これからの不動産投資のあり方についてお話を伺いました。

ここ数年の間に、大きな資産を持たない普通の会社員が不動産投資を行うようになった背景をどのようにお考えですか?

黒田:将来の収入の予想が難しい時代となりました。
日本は経済成熟期に入り、またIT化の進化は労働の効率化を加速させました。時代の高度化や効率化が進むことは喜ばしいことではありますが、一方で、所得格差を広げることにもつながっています。高付加価値や高品質のサービスについては高くても売れる時代ですが、画一的・繰返しマニュアル的作業に基づくものについては低価格競争が激化しています。一億総中流といわれた所得層が壊れてきているのです。
さらには、社会の構造が大きく変化しています。
終身雇用形態の崩壊、非正規雇用社員の増大、企業年金・退職金制度の見直し、医療費負担の見直し、公的年金制度の見直し、低金利時代・・・。このような変化の中で、日本は少子高齢化も進んでおり、老後資金については自助努力による準備の必要性が高まってきています。
継続的に一定の収入が得られる不動産投資は、これら時代の背景が大きく関わってきているものと考えています。第三の年金である自己年金を不動産投資で実現しようとする動きが注目を浴びているといってもいいでしょう。

女性のオーナーも増えているように思えますが男性同様に考えられる背景をお聞かせください。

西野:将来の収入予測困難性、社会構造の変化に加え、価値観を大事にし、自分らしく生きる女性の進出が大きく影響しているのではないでしょうか。
また、不動産投資という特殊性をみた場合に、女性ならではの視点が発揮されるケースが多くあります。日本では一般の事業経営者では男性が多く、女性企業家はわずかしかいません。ところが、堅実な不動産経営をされている方の中では女性が非常に多いものです。
不動産投資は理論的に考えることがとても重要と言われています。ここに女性ならではの視点が大きく役立っているのではないかと思います。ファミリータイプであれば、やはり女性である奥様の目や決定権を度外視する訳にはいきませんが、男性には見えない部分があります。また“何棟所有しているか”よりも、堅実な不動産経営を実行されます。安定収入を確保すべき時代の要請にもマッチしており、このようなことから女性の不動産オーナーが増えているものと考えています。

社会保障制度の崩壊とりわけ年金についての問題がクローズアップされていますが、年金受給の有無、受給開始年齢、受給金額はどのように変わり、今後、どのような準備が必要だとお考えですか?

黒田:高収入より安定収入を確保するための準備が必要と思われます。日本の年金制度では、今働いている世代(現役世代)が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの年金給付に充てるという「世代間での支え合い」という仕組みになっています。この仕組みから考えると、少子高齢化に加え低金利時代の影響が大きい日本においては、将来にわたり希望する年金水準を保つことは難しいものです。現役リタイア後にも豊かな生活を願っている人は、自分でその年金を準備する必要が出てくることになります。 古典的な投資の考え方に「資産三分法」というものがあります。預金などの安全性を重視したローリスク・ローリターン、株式投資などのハイリスク・ハイリターン、不動産投資などのミドルリスク・ミドルリターンに分散投資する、という考え方です。
自己年金を確保するつもりであれば、高収益を狙ってまさに元も子もなくすようなことは避けなくてはなりません。安全性を重視しすぎると将来の年金額が非常に少なくなります。資産運用の観点からは資産三分法が理想ではありますが、自己年金の観点からは、ミドルリスク・ミドルリターンを中心に検討し、安定収入を確保すべきです。信頼できる専門家を選択することも重要と思われます。

将来、普通の世帯が普通の生活をできない時代背景を想定すると今の30代、40代の方々の将来設計についてよいアドバイスはございますか?

西野:自己責任時代の色が強くなってきていますが、無理な対策よりゆとりある将来設計を心がけるべきだと思います。
投資をするにしても、毎日の資金繰りに追われ生活ペースが狂ってしまえば何のための投資か意味が無くなってしまいます。たくさんの情報に振り回されたり、「何か将来への備え」と焦って考え無理なことをしたりしないようにすることです。数年先のことは、ある程度現実味を帯びた将来設計が必要だと思います。しかし、25年先、30年先までの将来設計となれば方向性があっていれば柔軟性のあるものにしておいた方がいいと思われます。
投資の観点から言えば、大きな借入れによる新規投資は返済リスクを伴う、将来の資産価値増加を狙った場合には大きなリスクがある、事前にリスクを検討し綿密な対策を練っておく、といったことが注意点として挙げられます。

少子高齢化が急激に進んでいく状況で、賃貸需要はどのように影響すると思われますか?

西野:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)によると、今後わが国の人口は減少する見通しであり、平成22(2010)年国勢調査による1億2,806万人から、平成42(2030)年に1億1,662万人となり、平成60(2048)年には1億人を割って9,913万人となり、平成72(2060)年には8,674万人になるものと推計されています(この時の65歳以上人口割合は39.9%になっています)。
このような人口動態から見る限りでは、少子高齢化は賃貸住宅需要の減少に少なからず影響があると考えられます。
その一方で、少子高齢化は、豊かな生活を可能にしている部分があると思います。団塊の世代といってもまだまだ元気な世代です。また、団塊の世代の子供たち(団塊ジュニア)の間では結婚しない割合が増加し、出生率が1.39(2010年概算値)と非常に低くなっています。それぞれの層においてある意味で余裕があり、自分のやりたいことを求めてきます。豊かでゆとりのある層では、高付加価値でその人だけ向けのサービスが求められ、より良いものを選ぶ傾向が強くなってくると思われます。
現状においては賃貸住宅の根強い需要がありそれに応えられるように供給ニーズが存在している事実もあります。多額のローンを抱えたくない、家族の変化に合わせたい、維持管理の煩わしさがない、といった理由で賃貸派の層の定着と増加現象が賃貸マーケットを支えているのです。少子高齢化や人口減少という社会現象が賃貸需要にどのように影響してくるかは、指標や統計だけでは判断できない部分もあるのです。ここでは複雑な時代だからこそ基礎基本にそった賃貸経営が求められていると思います。

アベノミクスにより日本経済の景気が回復傾向にありますが、2020年の東京オリンピック効果も踏まえ、今後不動産市場に大きな変化はございますか?

黒田:アベノミクスと東京オリンピック開催決定、さらにはリニア新幹線着工の話題もあり、不動産地価の上昇が期待されています。中でも、湾岸エリア付近、皇居や東京スカイツリー、レインボーブリッジなどのある「千代田区」「墨田区」「港区」にある良質不動産は価値があがり、同時に地価も上がると思われます。建物物件や駐車場用地の価値も上がることでしょう。個人だけでなく、企業や機関投資家も熱視線を注いでいるとの見方も聞かれます。
市場では、オリンピックに関連した波及効果のほか、もともと計画されていた道路などのインフラや都市開発の進行など、開催を契機とする経済効果にも注目が集まっています。さらに、東京オリンピック開催に伴って、国内外から東京への観光客が増加することで、商業施設がにぎわうと思われ、ホテルなどの施設需要の増加も見込まれます。
東京オリンピックの開催による経済効果は、日本の経済再生を目指すアベノミクスとの相乗効果によって、デフレ経済からインフレ経済への転換を図ることが期待され、日本の不動産市場にとって追い風になると思われます。ちなみに過去、東京で行われたオリンピックに伴う経済効果は、大阪府を中心にした近畿エリアにも大きな影響が出ていたようです。東京だけでなく、日本の主要な都市に関しても好影響が見込めそうです。

不動産投資のスタートは、景気の良い時、悪い時と、どちらで始めるのがよろしいのでしょうか?

西野:不動産投資のスタートは、景気の悪い時に始めるべきです。景気が良くなると、まず借入れ利息の利率が上がります。建築費が高騰しますので、イニシャルコストが上昇し投資利回りを悪化させます。また、一度設定した家賃は景気上昇に連動して上げることは容易ではないと思います(多少は上げられると思いますが)。これはバブル期を経験した不動産投資家の共通した認識です。
震災復興を含めて景気上向きが期待されている今は、不動産投資にとってはいい時期なのではないかと思われます。

20代で不動産投資を始めようとすれば、どのような条件が揃えばスタートできますか?逆に50代から始めるのは遅すぎますか?

黒田:不動産投資を始めようとする方は、資産を既に保有されている方を除き、多くの方は融資が必要となると思われます。
これは20代であろうと50代であろうと同様です。融資を受けるためにはその方の年収や職業、勤続年数等の属性を金融機関等が審査し、この審査が通れば晴れて投資資金を調達することができます。なお、既にマイホーム等を所有している方についてはその残債も加味されますので注意が必要です。金融機関によっても違いますが、一般的に言われている条件としては以下の通りです。
◇勤続年数…概ね3年以上
◇年収…概ね500万円~1,000万円以上 等々
不動産投資を始めるのに遅すぎるということはありません。しかし、金融機関にもよりますが完済の年齢が最長でも80歳前後となりますから、50代から不動産投資を始める方はある程度自己資金を入れて借入額を抑え返済期間を縮めるのが良いでしょう。

不動産投資=首都圏(東京)が注目されますが、地方のエリアでも不動産への投資は、十分に勝算はありますか?

西野:不動産投資については首都圏に限らず、地方エリアにおいても勝算は十分にあると言えるでしょう。
なぜならば、地方エリアのほうが首都圏よりも積算価格が出やすく融資も引きやすい状況にあるためです。金融機関等が担保評価を出す路線価についても都市圏より地方エリアのほうが積算価格とその乖離が少ない場合が多いため、融資を受けやすいでしょう。
また、利回りについても首都圏より地方エリアのほうが良く、短期間にその投資の回収を行うことができる可能性が高いでしょう。

地方の方が利回りは良いのに、東京が投資にとって人気エリアになっているのはどうしてでしょうか?

黒田:利回りが良いだけでは、安心した投資とは言い難いです。
不動産投資についてはどうしても空室リスクがつきものです。その空室リスクについては地方エリアよりも首都圏のほうが少ないといえます。また、内装の修繕等の費用については双方において金額にそう大きな大差はありませんので、単位面積あたりの家賃収入が高い首都圏のほうが収入のうち維持費に係る割合が少なくなります。
その他にも、広告料や敷金、礼金についても需要の高い首都圏のほうが有利と言えるでしょう。
そのため、首都圏が不動産投資の人気エリアの一つとなっているのでしょう。

区分所有の不動産投資において考えられるリスクは、なんですか?また、そのリスクを回避するには、どのような取り組みが考えられますか?

西野:区分所有マンションについては少ない資金で始められる不動産投資として人気を博しています。
しかし、その反面リスクも伴います。
一棟所有と区分所有との違いは、一棟所有の場合は空室が出たとしてもその一棟のうちの一戸であるため収入が全体の数%落ちるのに対し、区分所有している物件が空室になった場合はその収入がゼロとなります。このリスクを回避するためには区分所有する物件を数箇所所有することで空室リスクを一棟所有と同程度に回避することが可能になってきます。
また、区分所有する物件を数箇所所有することは、一棟所有するよりも地政学的リスク等を回避する効果もあります。

個人で複数戸の区分所有をされているオーナーがいますが、このような場合、法人で行うほうがよいメリットはありますか?

黒田:個人で複数戸の不動産投資を行っている方は、所得が高額になる場合があります。税務的に考えますと個人の所得税については累進課税方式をとっているため所得が増加するにつれ税額が多くなる傾向にあります。そのため個人にかかる税額は最高で50%超の税率となります。
しかし、法人について累進課税方式はとっておらず所得に対し一定率の税率(条件により軽減税率の適用あり)を乗じ税額を算定します。
法人で不動産投資を行った場合、この場合に算出された法人税と前述した所得税の差額分だけ個人で不動産投資を行ったときよりも納税額が減る結果となります。

不動産投資を行うことによる、税制上(節税)の優遇はどのようなものがありますか?

黒田:個人で不動産投資を行うことによる税制上の優遇は、サラリーマンの方であれば不動産投資により赤字が発生した場合には給与所得とその赤字を相殺することが可能であり、給与所得のみの場合よりも納税額が少なくなる結果となります。
さらに、相続税対策の視点で考えますと古い物件や別荘地で保有するよりも、立地や収益性を勘案した投資不動産等で保有するほうが相続税計算時の評価は下げることができます。これは資産をキャッシュで保有している場合についても同様のことが言えます。また、事業用の不動産を売却して新たに不動産を取得した場合には特定事業用資産の買換えとして譲渡益課税を抑えることができます。

実際、不動産投資をすることによって、将来的にゆとりある生活を実現することは可能でしょうか?実現するためのアドバイスもいただけますか?

西野:不動産投資を行うことにより、キャッシュを生み出す資産を保有することになるため現役をリタイアした方にとっては年金と同様の収入源となり得ます。また、サラリーマンの方にとってみれば給与と別の副収入となります。前者であっても後者であっても不動産投資をするかしないかで、生活水準は大きく変化してくるものと思われます。
不動産投資についてはキャッシュインフローとキャッシュアウトフローのバランスが重要となりますので、無理のない将来計画を設計し、実行していくことが重要になります。