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アメリカの不動産投資の優位性と注意点

日本の不動産投資と比べるとさらにハードルが高く感じられるアメリカの不動産投資ですが、最近は日本にいながらアメリカで不動産投資を行う人が増えています。今回はアメリカでの不動産投資の優位性と注意点について論じていきたいと思います。

まずはアメリカと日本の国の基本情報を比較してみましょう。カッコ内は日本の情報です。

人口:約3億1800万人(約1億2700万人)
合計特殊出生率:1.88(1.41)
実質GDP:16.05兆ドル(4.5兆ドル)
空室率:約4.2%(15%程度)

まず目を引くのが合計特殊出生率の高さです。通常、経済や社会が高度化し、医療制度が整備されると平均寿命が延びて少子高齢化が進み、合計特殊出生率は下がる傾向にあります。日本をはじめとする多くの先進国では合計特殊出生率の低下が問題となっています。

しかし、アメリカは数ある先進国の中でも特に合計特殊出生率が高く、今後も安定して人口が維持されると見込まれています。

空室率の低さもポイントです。先のサブプライムローン問題で多くのアメリカ国民は持ち家を失いました。その持家を失った人たちが賃貸物件に住まうようになったため、ここ数年でアメリカの空室率は大幅に低下したのです。

この人口の安定性と空室率の低さがアメリカ不動産投資の優位性といえます。逆にいえばこのメリットが今後薄れていくようでしたら、日本人がわざわざアメリカで投資する必要はなくなります。今後もまだしばらく人口増・低空室率は続くことが予想されていますので、投資するなら今がチャンスです。

次にアメリカと日本の減価償却の違いについて説明していきます。減価償却とは経費を数年~数十年程度に振り分ける制度のことです。減価償却費制度を使って毎年経費の支出を行ったことにすれば、その分課税所得を減らせます。

日本の減価償却制度は大変に複雑であり、建物の構造や築年数によってその減価償却年数は大きく異なります。鉄筋コンクリート造と木造で減価償却にかかる機関も異なりますし、新築と中古でも減価償却にかかる期間には差が付きます。

一方、アメリカの減価償却制度は非常に単純です。鉄筋コンクリートでも鉄骨でも木造でも、新築でも中古でも常に減価償却年数は27.5年です。築100年の物件を購入しても減価償却年数はやはり27.5年です。

また、日本では金融機関の評価は減価償却年数によって大きく左右する(古い建物は評価が低くなり、融資が受けづらくなる)のに対して、アメリカの場合は新築でも中古でもそれほど融資の難易度は変わりません。

なぜアメリカがここまで中古物件を優遇するのかというと、中古物件の人気があるからです。日本は地震大国であり、大きな地震があるたびに建築基準法が改正され、より地震に強い建物が作れるようになります。言いかえれば建築基準法が改正される前の建物は地震に弱い建物ということになります。当然そんな建物は人気が出ませんし、借り手もつきません。

アメリカにも地震活動が活発な地域はありますが、日本のように国中が地震危険地域というわけではありません。国土も日本とは比べ物にならないくらい広く、「安全な場所に住む」という選択肢も選びやすいですしね。中古でも新築でも大して耐震性が変わらない以上、多くの人がより安い中古物件に流れるのは自然なことといえます。

実際問題アメリカには築40年、50年という物件がごろごろしています。日本人の感覚からすれば築40年の物件などボロ家でしかないのですが、アメリカではまだまだ買い手がたくさんつくのです。

また、アメリカではマイホームは「定期的に住み替えるものである」というとらえ方をする人が多いです。日本人のように一生に一度の買い物だととらえる人はまれです。アメリカでは平均して7年に1度住宅を住み替えるというデータもあり、それが中古マーケットを活性化させています。

アメリカは中古不動産市場が日本のそれと比べて成熟しているというのも有利な点の一つです。日本の不動産業界はまだまだ閉鎖的で、有用な情報は業者だけが握っているということも多いです。これは決して公平な環境とは言えません。不動産投資をする人が少ないので不満の声はあまり多くないように見えますが、そのことに憤慨している個人投資家は実は少なくありません。

一方、アメリカの中古不動産市場は常に一般人に対しても開かれています。アメリカの不動産情報は、マルチプルリスティングサービス(MLS)というシステムで管理されています。これ自体はアクセス制限がかかっているのですが、このデータを企業が配信しているため実質的には一般人も無料で自由に閲覧することが出来ます。

消費者保護が進んでいる点も見逃せません。日本では通常住宅ローンが支払えなくなった場合、債務を放棄することはできません。住宅を売却して、それでも払えないという場合はローンを支払い続けなければなりません。

しかし、アメリカでは住まいを売却すれば残りの債務については放棄することが出来ます。このようなローンを「ノンリコースローン」といいます。サブプライムローン問題で多くのアメリカ国民は家を失いましたが、家以外の財産は失わなかったのでその後も生活を続けることができたのです。

これじゃ銀行が一方的に損するだけじゃないか、と思われるかもしれませんが、ノンリコースローンは通常のローンと比べて金利が3%程度高く設定されています。この金利で銀行は十分稼げているので、多少債務不履行者が現れても問題なく経営を続けていけるのです。

ただしこのノンリコースローンも手放しでほめられたものではありません。ノンリコースローンはいわゆるモラルハザード(倫理の欠如)を生む可能性があるからです。

もしあなたが住宅を買うときにノンリコースローンで融資を受けられることになったらどう思いますか?「どうせローンを返せなくなっても自宅を売却すればいいや」というふうには思いませんか?

こういう発想が増えれば返済に対する義務感が希薄化し、また安易にどう考えても返済不可能なローンを組む人が増えるかもしれません。また、どうせいずれは失う家だと思えばそのメンテナンスもおろそかになります。

そうなれば当然銀行も防衛策として融資基準を厳しくしたり、金利を高めに設定せざるを得ません。そうなれば当然ノンリコースローンを組む人は減ってしまいます。この仕組みは人々の両親と倫理に大きく依存した危うい制度でもあるのです。日本でノンリコースローンが定着しない理由にモラルハザードの危険性を挙げる人も居るくらいです。

次にアメリカ不動産投資と融資の関係について説明していきます。そもそもアメリカの金融機関が日本人に融資をしてくれるのか心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカは金融機関もオープンであり、自己資金が30%ほどあれば人種にかかわらず融資を受けられます。

また、アメリカの融資には大きく分けてフルドックローンとステイテッドローンの2種類があります。フルドックローンは日本人が想像できるいわゆる普通のローンでです。収入や職業、貯蓄などから審査を行い、その条件がいい人ほど低金利・長期間でローンを組むことが出来ます。

一方、ステイテッドローンは自己申告方式のローンです。こちらは証明書類は不要で、パスポートなどの身分証明書、一定額(半年ぐらいのローン支払いが可能な程度)の銀行預金、頭金さえあればだれでも組むことが出来ます。審査も簡単で融資も迅速というメリットがあります。

ただし当然ステイテッドローンはフルドックローンと比べて金利が高くなります。大体1%程度上乗せされることが多いですね。日本語で書かれた申告書類など無効の銀行は見てくれませんから、通常はステイテッドローンで融資を受けることにになります。銀行と関係を続けていくうちに、いずれフルドックローンでも借りられるようになります。

また、アメリカの融資の得意性として、年齢が高くても長期ローンを組めることが上げられます。60代、70代になってから30年ローンを組む人も少なくありません。これは先ほど説明したノンリコースローンが関係しています。

前述の通りアメリカは日本よりも住宅の住み替えが盛んであり、平均で7年程度で家を出ます。家を出れば当然それは売却することになり、ノンリコースローンなので債務は帳消しになります。

なので若い人が30年、40年とローンを組んでも、その家に住み続けながら時間をかけて完済する人はすごく少ないです。たいていは少しローンを返済したところで住宅を売却することが多いです。

若い人がすぐに住宅を手放す(ローンを放棄する)ことが一般的になれば、若くない人の融資を断る理由もなくなります。何歳だろうが融資してから最初の数年~10年程度ちゃんとローンを返済してくれれば銀行としても文句はないわけです。

何歳からでもローンが組めるというのは大きなメリットです。今から日本で不動産投資を始めても間に合わないという中高年層の方は、アメリカ不動産投資を考えてみるといいでしょう。

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さて、ここからはアメリカ不動産投資のデメリットとリスクについても考えていきたいと思います。

最初に多くの人が思いつくリスクは為替変動に対するリスクでしょう。せっかくアメリカで稼いでも円高が進んでしまっては収入は目減りしてしまいます。逆に円安が進めば収入は増えるので、ただリスクを背負い込むわけではありませんが、それでも不安に思う人は多いでしょう。

このリスクを小さくする一番の方法はアメリカに在住することです。アメリカに住んで、もう日本に戻らないという気持ちにさえなれば円がいくら高くなろうが関係ありません。しかし、実際問題住み慣れた日本を映るというのはかなり勇気がいることでしょう。

お勧めなのは円高が進んだときに不動産投資を始めることです。今は円安傾向が続いていますが、今後再び1ドル100円を割り込むようなことがあればその時が投資の機会といえます。もちろん、今後さらに円安が進むと思うのならば今投資を始めるのもOKです。

続いて日本とアメリカの文化の違いについてです。和を以て貴しとなすという日本文化とは対照的に、アメリカは良くも悪くも個人主義が行き届いた国であり、個人の利益を最大化するためには訴訟も辞さないという国民が非常に多いです。

とはいえ、日本人の不動産投資家ががいきなり訴訟に巻き込まれることはまずありません。アメリカ人も訴訟にはお金がかかること、勝訴判決を得てからの賠償金回収が最も大変であること(日本人のような国外の人間であるならばなおさら)であることは分かっていますので、不動産投資1年目、2年目でいきなり訴訟に巻き込まれることはまずないでしょう。ただし、アメリカ内で資産が増えてくれば訴訟に巻き込まれるリスクは挙がってきます。いずれにせよ早目に防御策を練っておいたほうがいいでしょう。

ちなみに、アメリカには現在約100万人の弁護士がいるといわれています。アメリカの人口は約3億1800万人ですから、大体320人に一人が弁護士ということになります。

一方、日本の弁護士は約3万人弱といわれています。大体4500人に1人が弁護士という計算になりますね。これだけ見てもいかにアメリカで弁護士の需要が高いかがわかります。

不動産投資を行う上で訴訟に巻き込まれないコツはいくつかありますが、まずは入居者の意見をよく聞いて物事を勧めれば、それだけでリスクはだいぶ減ります。

また、日本語が出来る弁護士と関係を築いていくことも重要です(あなたが英語ペラペラだという場合は必ずしも必要ありませんが)。

また、当たり前ですが日本とアメリカでは商慣習が違います。たとえば、日本では不動産投資において仲介料として貸主、借主の両方から手数料を得ることが多いです。一方、アメリカの場合は通常、貸主が手数料を支払います。

こうした商慣習を知らないと何かとトラブルが起こることになります。

また、商売から離れた慣習の差にも注意が必要です。アメリカは人種のるつぼ、銃社会で日本とはこれだけでも大きく異なります。現地に行ってその地域の暮らしを見ることが、慣習を知る一番のコツといえます。

次に日本でもたびたび問題となる家賃滞納リスクについて。日本の場合は原則として3カ月家賃滞納が続かないと追い出せないという決まりがあり、これに頭を悩ませている不動産投資家も少なくありません。

一方、アメリカは滞納が始まればすぐに追い出すことが出来ます。もちろんそれは原則であり、実際にいきなり追い出すことになるケースは少ないですが、少なくとも日本よりはより投資家側の視点に立っているといえます。

とはいえやはり滞納リスクは常に付きまといます。入居者審査については少なくとも日本と同等か、それ以上に厳しくしたほうがいいでしょう。

ちなみに、アメリカの場合は管理会社が不動産投資家に断りを入れずに入居を断るケースも多いですが、それは入居者を厳選したほうが後々のトラブルが少なくていいだろうという読みがあるからです。

アメリカの管理会社は日本の管理会社と同様に家賃滞納についてはプロです。また、アメリの管理会社は家賃滞納が起きたらどうするかのマニュアルもしっかりと整備しており、一定期間が立ったら立ち退き処理を行ってくれます。面倒なことは一任してしまった方がかえって合理的です。

管理会社によってはあえて支払交渉をせずにさっさと立ち退かせて、次のより優良な入居者を見つけることを優先させるような管理会社もあります。なんとも合理的な考え方ですね。特に入居あっせんに対して管理料を支払う契約にした場合はその傾向が強くなります。

一人の人に長く住んでほしいと考えている場合はこうした契約はしないほうがいいでしょう。ただしあまり情緒に引っ張られる過ぎると入居者にいいように利用されますのでほどほどに。

最後に自然災害に関するリスクについて。アメリカの一番の災害リスクといえばもちろんハリケーンです。

米軍の合同台風警報センターはアメリカの台風やハリケーンを監視し、それに関するデータも取っています。過去の統計を見る限りではアメリカの東海岸そいで大量にハリケーンが発生しています。一方、西海岸や北側ではほとんど発生していません。めったに起こらないことですが、念のために他件に加入していいたほうがいいでしょう。

それから地震リスクについても見逃せません。アメリカは日本ほど地震が多いわけではありませんが、それでも注意は必要です。自身はハリケーンとは対照的にアメリカ西海岸のプレート衝突地域で大量に発生しています。地震かハリケーン、どちらか少なくとも片方は覚悟しなくちゃいけないわけですね。アメリカにも日本と動ようん地震保険がありますが、その定着率は地震が多いカリフォルニア州でさえ20%以下です。万が一に備えて念のために加入しておきましょう。

このようにアメリカの不動産投資には様々なメリットデメリットがあります。どこで投資をするにせよ一定のリスクを負うことからは逃れられませんが、いろいろと工夫をすることによってリスクは小さく、リターンは大きくすることが出来ます。頭を使って投資しましょう。