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海外不動産投資が必ずしもお勧めできないワケ

今回のテーマは海外不動産投資についてです。近年は国内のみならず海外への不動産投資に目を向ける投資家が増えています。面倒な前置きは抜きにして海外への不動産投資は儲かるのかどうかという一番大事な結論を最初に申しあげますと、「儲かることは儲かるが、わざわざ日本の市場を捨てでまで海外に投資する必要はない」といえます。今すでに海外に住んでいたり、将来海外に移住する計画を立てている人は海外の物件を購入してもいいですが、そうでない人は無理して買う必要がない、というのが私の結論です。

まずは海外不動産投資のメリットといわれていることについて確認していきましょう。海外不動産投資のメリットとしてよく取り上げられるのが、住宅需要の高さです。たとえば、アメリカの空室率は日本の半分以下といわれています。これはサブプライム問題で持ち家を失った人が賃貸に住んでいるためです。さらにアメリカは先進国の中では比較的合計特殊出生率が高く、人口もいまだに増加しています。成熟して安定した投資システムがあるにもかかわらず人口増を続けていることから、多くの日本人不動産投資家がアメリカ市場に挑んでいます。

一方、東南アジアをはじめとする新興国への投資も活発です。こうした国は日本やアメリカと比べると市場の成熟度は低いですが、その分ハイリターンが狙えます。特にインドネシア、フィリピンあたりはかつての日本の高度経済成長期のような大幅な成長が今まさに起きており、投資のチャンスと見る人も多いです。

また、今の日本市場は期待できないので仕方なく海外に目を向けるという方も居ます。皆さんもご存じの通り日本は世界に類を見ないほど少子高齢化が進んでいます。今はまだ人口は頭打ちから微減程度で済んでいますが、今後は地方都市を衰退に人口がかなり激しいペースで減っていきます。2030年以降、人口はしばらく年100万人のペースで減少するという試算があります。特に衰退著しい地方都市では人口は減るうえに残ったのは高齢者ばかり、という事態もすでに起き始めています。

東京の場合はまだそれほど衰退は始まっていませんが、それでもそう遠くない将来に人口が減り始めることは間違いありません。最悪の場合、日本経済自体が破たんするかもしれません。こうした日本市場に見切りをつけて、海外に活路を見出す人は決して少なくありません。

こうした理由から海外の不動産投資を始める人も居るようですが、繰り返しになりますが国内でも十分利益を上げられる物件はありますし、無理して海外に出ていく必要はありません。その理由を申し上げます。

まず一つ目に海外市場は日本とは商慣習や法律が全く日本とは違います。商慣習や法律が違うならば勉強すればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、海外ではこうしたルールが変わることは珍しくありません。そもそもそのルール自体が日本語では書かれていないため、微妙なニュアンスの際に気が付けないこともあります。

また、海外の建築技術は日本のそれと比べると著しく劣っています。日本でも設計ミスや施工不良が起きることはありますが、海外では日本以上にそうしたトラブルがよく置きます。

たとえば、韓国ではわずか17人の人がビルの中でエアロビダンスを行っただけでビルが地震が来たときのように振動した、という事例があります。これは日本ではまず起こり得ないことですが、建築技術に劣る諸外国ではこのようなリスクについても考えなければなりません。

また、為替リスクについても考慮しなければなりません。たとえば、今のドル円レートは大体1ドル=120円ぐらいですが、これが上下することによって利益が減ったり、損失が大きくなったりすることがあります。

たとえばアメリカで1億2000万円(100万ドル)の投資を行い、それが120万ドルにまで増えたとします。いやあよかったよかったとその120万ドルを日本円にまた戻したところ、その時の為替レートが1ドル=100円だったため、換金後に残ったお金は1億2000万円にしかなりませんでした。リスクを取って20万ドルも増やしたにもかかわらず、投資前と投資後で手元にあるお金は1円も増えていません。海外での投資にはこうしたリスクがあるのです。

もちろん、逆に利益が増える場合もあります。仮に1ドル=150円となっていれば換金後のお金は1億8000万円となり、都合6000万円の利益です。為替リスクはリスクであると同時にリターンでもあるのですが、為替を素人が読み切ることなどできません。名のある経済学者ですら為替レートを読み切ることはまず不可能なのですから。

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海外不動産投資が抱えているリスクは為替レートの変動だけではありません。今は安定していても、将来的にデフォルトやハイパーインフレといった経済的ショック、外資規制や為替政策など自力ではどうしようもないこと、あるいは内乱や革命といった大変動が起こる可能性はあります。さすがにアメリカやイギリスなどの成熟した国で国家転覆が起こるようなことはまずないでしょうが、移民と地元民の衝突、黒人と白人の衝突などが起こる可能性は十分あり得ます。

その衝突で自分の投資した建物が被害を食らってしまっては元も子もありません。

さらに海外不動産投資を行う以上はその海外の事情についても知らなければなりません。まずは言語、これがわからなければ話になりません。英語や中国語などのメジャーな言語ならまだ学びやすいですが、マレーシア語やインドネシア語などはまずその言語を学ぶ方法を見つけるのに苦労します。

言語だけでなく、その土地の気候や風土、国民のものの考え方、建築技術の程度などについても知っておかなくてはなりません。地元の投資家はこれらの事情について詳しく知っているのですから、日本人は少なくとも彼らと同等程度の知識を見につける必要があります。

独学でそうしたことを学ぶのはまず不可能でしょうから、現実的には現地で専門のコンサルタントをつけることになるのでしょうが、そうすると今度は彼らに払う顧問料が高くなります。これでは海外不動産投資のメリットである高い収益性が相殺されてしまいます。

プロでも何でもない個人がいきなり海外不動産投資を行っても手痛い失敗をすることは目に見えています。それでも投資を行いたいという場合には、あらかじめその土地について知り、現地に何度も足を運んでひたすらその土地になじもうと努力することが求められます。

投資先を決める一つの目安にカントリーリスク(国別の投資リスク)があります。OECDは定期的にカントリーリスクを発表しています。最も高いAからもっとも低いHの8段階で評価されています。日本は最も高いA評価を受けています。つまり、わざわざ海外に出るよりはもともとリスクの低い日本で投資をした方がよっぽどいいよ、ということです。

もちろんリスクを承知の上で海外に目を向けることは悪いことではありません。日本以外にもA評価を受けている国はたくさんあります(アメリカ、イギリス、ベルギー、オランダ、シンガポール、ドイツ、オーストラリアなど)。

ただ、せっかく偶然にもリスクの低い日本に生まれたにもかかわらず、多大なお金と時間を使って海外不動産投資を行うのにそこまでメリットがあるのかというと疑問です。日本の市場はこれか先細りするばかりでどうしようもないと考えていらっしゃる方も少なくないと思いますが、実際(実感があるかどうかは別として)株価も上昇していますし、景気も回復して地価も上昇傾向が続いています。リーマンショックであらかた引き上げてしまった海外投資家も今は日本にふたたび注目しています。日本の投資家が海外に目を向けているのとは逆に、海外の投資家も日本に目を向けています。

先日発表された世界都市総合ランキング(年の魅力を数値化してランキング付けしたもの。森記念財団都市戦略研究所調べ)では、東京はロンドン、ニューヨーク、パリに次いで4位にランクインしています。5位のシンガポール、6位のソウルを押さえて、アジアでは最上位に位置しています。日本は東京に一極集中しているんだから当たり前だろう、と思われるかもしれませんが、大阪も26位(バルセロナの1つ上)、福岡も37位(モスクワの1つ下)と決して低くない順位にランクインしています。

これを見れば日本は東京のみならず、地方都市においてもまだまだ有力な投資先であることがわかります。今回はランクインしていませんが、札幌や広島、名古屋あたりの大都市も十分投資を検討するに値する都市です。

最後に経済破たんの懸念についてです。とうぜん、日本が今後経済破たんを起こす可能性はゼロではありません。ゼロではありませんが、それを言ったらアメリカやイギリスや中国やロシアやインドや韓国が経済破たんを起こす可能勢だってゼロではありません。問題はその可能性の大小です。

結論から言えば、多くの金融に関するプロフェッショナルは5年以内に経済破たんを起こす可能性はまずないと見ています。一部の声が大きい人たちがやれ日本は破たんするもうおしまいだと声高に叫んでいますが、彼らはああいって悲観論を蔓延させることにより自身の著作や講演を売っていきたいだけなので相手にする必要はありません。そもそも本当に二本が近いうちに経済破たんすると思っているのならいつまでも日本にとどまって居るはずがありません。

借金が1000兆円もあることを懸念される方もいらっしゃるかもしれませんが、米国の借金は今の為替レート換算で1300兆円もあります。絶対額だけならアメリカの方が危険なのです(もちろん人口や産業構造の違いなどもあり、一概にアメリカが危険だと断じるのも間違いですが)。

また、今の日本政府は「緩やかなインフレ」によって借金を相対的に軽くする方策を取っています。緩やかなインフレで物価が上昇すればそれだけ1円の重みが減り、したがって国の相対的は借金も軽くなります。うまくいくかはわかりませんが、方向性としては正しいです。

それから忘れがちなことですが、国債というのは必ずしも全額を返済する必要はありません。返済できる見込みと信用さえあれば、借金の総額が多くても資金を借りることは可能です。

たとえば創業したての小さな企業が銀行から1000万円借りるのは大変ですが、銀行との取引経験がたくさんある大企業は1億円単位でお金を平気で借りることが出来ます。これと同じです。日本は世界有数の大企業のようなものなので、多少借金が多くても信頼してもらえるわけですね。

これらの事情を勘案すれば、海外不動産投資が必ずしもメリットが大きいものではないことはご理解いただけたと思います。ただし、そうはいっても中にはどうしても海外投資がしたいという方もいらっしゃることでしょう。

仮に海外不動産投資をどうしても行いたいというのならば、まずは海外不動産投資に関する一般的な知識をつけるところから始めましょう。書店に行けば多くの有用な書物がたくさん販売されていますし、本を読むのが面倒だという場合にはネットで情報を探してもいいでしょう。

こうした情報に触れるコツは「なるべく多くの人の意見を聞くこと」です。私が書いているこの文章も含め、世の中に発信されているすべての情報にはバイアスがかかっています。私が海外不動産投資はあまりお勧めできないと考えるようになったのはたまたま説得力があるそうした言説に触れることがあったためです。もし海外不動産投資は素晴らしいと説いている、説得力のある情報に出会っていたら私はそっちに流れていたかもしれません。

一人でも多くの意見を聞くことによって、こうしたバイアスから逃れることが出来ます。一つの意見より二つの意見、二つの意見より三つの意見と情報を組み合わせ重ねることによって、より最適な結論を導き出すことが出来ます。

そして意見や情報を組み合わせるためには、やはり多くの情報に触れるしかありません。月並みな結論ですが、海外不動産投資で成功したいと本気で考えているのならばまずは海外不動産投資についてたくさん勉強することです。勉強量はきっと国内不動産投資をする場合よりも増えることでしょう。その勉強をこなせるという覚悟が出来ている人だけが、海外不動産投資に手を出すべきだと私は考えます。